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広報・調査部

With/Afterコロナ時代の食と農

コロナ禍は食農業界にも大きな影響を与えました。今後の農産物流通はどのように変化するか? 識者・関係者に聞きます。

流通現場から見る今後の農畜産物流通

全農チーフオフィサー 戸井 和久 氏
③見るべきものは生活者のライフスタイル[全3回 最終回]

 これまで、業態の変化やどのような視点でサービスや商品を開発するかを見てきましたが、最終的に全農およびJAグループとしてどう取り組んでいけば良いか、全農のチーフオフィサーとしての考えを述べます。

自分たちのサプライチェーンを見直す

 一つは業態のボーダレス化が進む中で、自分たちの今までの常識的なサプライチェーンを見直すということです。ラストワンマイルのためのネット機能や個配物流機能を強化し、そのための冷凍や加工機能も含めたストックポイントとなる施設の整備を戦略的に進めることが求められます。これは既存の縦割りの組織では難しく、組織に横断的な横串を刺し、外部ともチームを組みながら、若い職員のボトムアップの発想に基づいて新しいサービスや商品提案を検討していくことが重要です。私が所管する営業開発部ではそのような新たな価値を生み出すバリューチェーンを作るため、部署、県本部、JA、外部の取引先と一緒になってプロジェクト形式で企画提案や商品開発を行っています。ここでのポイントは失敗を恐れず、まず実行してみることです。

生活者にどのように近づいていくか

 もう一つは生活者により近づいていく事です。前回、生活者データはまだまだ未知であると書きましたが、それらを分析していくための機能は必要です。例えばコロナでデリバリーが一般的になってきましたが、デリバリーされた商品がどのように食べられているか、食べる瞬間に本当においしい状態か、まだまだ商品開発やブランディングの余地があると思います。直近では行動研究のアプローチからの商品開発が見られますが、同様の研究機能をJAグループとして持っても良いのではないでしょうか。

本当のプロダクトアウトの商品開発

 前回、ストーリーが今以上に求められていくと書きましたが、JAグループは生産側のストーリーをどこよりも持っている組織です。普段、マーケットインの発想をと言ってはいますが、生活者のニーズが見えた状態でそれに合わせたストーリーを提供する、これが本当のプロダクトアウトであり、単なるマーケットインよりも負けない差別化商品だと思います。

食のトップブランドになる

 今回のコロナでの買い占めや物流の乱れは、私たちの普段食べている食料が生産現場の努力によって支えられていることを再認識させてくれるきっかけになったと思います。それと同時に、それが崩れることへの不安は消費者心理の中に大きく残るのではないかと思います。これに応える形で日本の農畜産物の価値を最大限提供することが、全農・JAグループだからこその食のトップブランドだと思います。

 

 次号では、グローバル視点で見る今後の農畜産物流通について、農林中金総合研究所取締役基礎研究部長・平澤明彦氏にお聞きします。

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