畜産事業の研究最前線 7
畜産事業の研究所を紹介する当シリーズ第7回は、家畜衛生研究所 クリニックセンターです。クリニックセンターでは全国5カ所のクリニック分室と連携しながら家畜の衛生検査を行い、農家所得の向上と食の安全を図っています。
家畜衛生研究所 クリニックセンター 家畜衛生検査に基づいた農場の生産指導を実施
組織改編と検査棟更新でクリニック機能を大幅強化
全国約1500戸の畜産農家が利用している全農クリニック事業。2018年度にその組織が改編され、各地域のクリニック拠点が「北海道分室」「北日本分室」「東日本分室」「西日本分室」「九州分室」の5カ所に再整備されました。
組織改編によりクリニックセンターと各分室の関係がフラットになった事で、家畜衛生研究所内での指揮命令系統が簡素化され、意思決定の迅速化が図られています。改編後はクリニックセンターの検査部門としての専門性が高まり、各分室がこれまで以上に衛生対策に取り組める体制となりました。
改編に伴い、18年3月に新クリニック検査棟が稼働し、分散・老朽化していた検査棟を集約。「細菌検査」「PCR検査(遺伝子検査)」「抗体検査」をはじめとする各種検査を、より効率的に行う環境が整備されました。
また、同センターではサルモネラ検査が年間6万検体にも及ぶ事から、作業省力化に向け最新鋭の検査ロボットも導入。近年は牛の呼吸器病を迅速に検査するDNAチップ法も取り入れられ(家畜を対象とした衛生検査への応用は世界初)、牛クリニックの普及にも力が注がれています。
さらに充実した衛生指導へ職員間の情報共有も促進
クリニックセンターに所属する8人の職員は、検査の精度管理、分室職員への技術的なサポート、新規検査メニューの開発などを実施しています。
一方、質・量ともに膨大な数に上る検査業務については㈱全農ビジネスサポートに委託され、約30人のスタッフが従事。そこで得られた検査結果に基づき、各分室の獣医師が農家への衛生指導を行います。
クリニック事業の充実のため、研究開発室との技術や情報の共有も不可欠です。また、「全体会議」や「勉強会」などの場を通じて全国に分散している職員同士が交流し、エリアの枠を超えた情報交換をする事も非常に重要です。