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米穀部

両者が描くWell-beingの実現に向けて

日清食品(株)深井常務取締役×全農 高尾常務理事 対談企画

 全農は2023年に日清食品(株)と「物流および原料の調達・供給に係る包括的な連携」を締結しました。日清食品(株)の深井雅裕常務取締役と全農の高尾雅之常務理事が対談し、24年以降の物流問題に対する両者の思いやサプライチェーンに関する業界・業種の垣根を超えた取り組みについて、意見を交わしました。


全農の高尾常務(左)と日清食品(株)の深井常務(秋田県大仙市の圃場で)
 
物流や原料の調達・供給 業界の垣根を越えた連携へ

深井雅裕常務(日清食品(株)) 今回全農様(以下、全農)と締結した「物流および原料の調達・供給に係る包括的な連携」の取り組みの一つであるラウンド輸送は、当社の中でもインパクトがあった取り組みと捉えています。連携にあたり高尾常務と昨年10月に記者会見をした際も、非常に反響がありました。今後も全農との取り組みを深化させていきたいと考えています。

日清食品 深井常務取締役
 

高尾雅之常務(全農) 日清食品(株)様(以下、日清食品)とは日清カレーメシなどのカップライスの原料供給が取引のきっかけでした。その後、物流合理化を進める中で始まったラウンド輸送は、業界としても、全農としても新しい取り組みであり、サプライチェーンの持続性を高めるために、大変重要であると認識しています。

全農 高尾常務理事

 

 
さまざまな取引先も参画 ラウンド輸送で相乗効果

高尾常務 全農が目指す食農サプライチェーンを維持・発展させていくために、2024年の物流問題は喫緊の課題であり、今まさに、対応に取り組んでいます。その中で、日本でエクセレントカンパニーと言われている日清食品とのラウンド輸送は、異業種でありながら物流問題という共通課題の解消に向けた取り組みであり、経済界やメディアからも先駆的な優良事例として注目されています。ラウンド輸送は、お互いの利害が一致して成立するものですが、今後、さまざまな取引先にも参画していただくことで、相乗効果があると期待しています。

深井常務 ラウンド輸送は、トラックの便数減により、働き方改革やCO2削減にもつながります。全農グループは全国に物流網があるので、例えば各地域と輸送方法について中長期的な話をすることで、双方無理のない経営を目指せるのではないかと思います。このような連携が当社グループの掲げる環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」(資源の有効活用・気候変動問題への取り組み)にもつながっていきます。特に、気候変動の取り組みに関してはSCOPE3におけるCO2排出量を「2020年比で25%削減」に上方修正しており、全農との取り組みも拡大しながら、高く掲げた目標に向かって取り組んでいきます。

高尾常務 全農としても、環境問題、とりわけ脱炭素化に向けての取り組みを検討しています。全農米穀部では、環境負荷低減米穀の取り組みを進めています。例えば、秋の時期、お米の収穫後に田起こしをする「秋耕」や、環境に配慮した持続可能な米の生産、流通体制の構築などです。こうした取り組みを通じて、サプライチェーン全体の温室効果ガスの削減を目指します。物流に関しては、日清食品とのラウンド輸送や、JR貨物様と連携した鉄道へのモーダルシフトをはじめ、一貫パレチゼーションシステム、統一フレコンの普及拡大、精米工場での計画的な原料米受け入れによる待機時間の解消など、ドライバー不足の解消につながる物流の効率化にも取り組んでいます。

岩手~茨城間のラウンド輸送
福岡~山口間のラウンド輸送

 
“ありたい姿”を描いて強みを分かち合いながら

深井常務 Well-being(ウェルビーイング)とは、WHOによると「心身ともにそして社会的にも良い状態」というとても抽象的な概念です。例えば、先日営業部の会議で、ある社員が「前年比百何%売り上げました」と発言したのですが、Well-beingとは数字で測れるものではありません。家に帰って家族に「お父さん、カレーメシ何万ケース売ったよ」といっても家族には通じませんよね。それよりも「日本で一番カレーメシ売ったよ」と言える方がワクワクする、そういった“ありたい姿”を描くというのがWell-beingだと考えています。また、組織の構造改革や取引方法、さまざまなことを変えて発展させるとともに、その変化の方法をもう少しオープンにして、企業間双方にメリットが出るような状態がWell-beingであり、働き方そのものをどう変えていくかがWell-being実現の第一歩と考えています。

高尾常務 将来的に両者にとって影響が大きい課題として「環境マネジメントおよびリスク管理強化」「気候変動への適切な対応」が挙げられます。こうした課題の解決に向け、連携協定に基づいた取り組みを進めることでWell-beingな社会の実現と成長を目指したいと考えています。

 レイモンド・チャンドラーという方の有名なせりふに、「タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない」というものがあります。まさしく、日清食品と全農の関係そのものだと思います。「タフでなければ生きていけない」とは、両者の強みを分かち合いながらタフに取り組んでいくということ、「優しくなければ生きる資格がない」とは、Well-beingにつながるものではないでしょうか。両者が人類愛や環境愛といった温かみを持ちながら、連携して経済社会をリードしていくことで、持続可能な社会やWell-beingの実現につながると感じています。

両者の連携や今後について意見を交わす2人(JA秋田おばこ おばこライスターミナルで)

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