中山間地域の生産拡大へ「先進園芸実証農場」
低コスト・省力化のピーマン施設栽培モデルを構築
岩手県本部は、中山間地域での施設栽培による集約的高収益園芸品目の生産拡大を目的に、ピーマン実証施設「先進園芸実証農場」を新設しました。2024年3月5日に竣工(しゅんこう)式を行い、伊藤清孝JA岩手県五連会長をはじめ、照井富也県農政担当技監ら関係者約30人が出席しました。
先進園芸実証農場が目指す方向
生産者の減少や拡大する耕作放棄地、昨今の気象状況などによる生産基盤の弱体化が危惧される中、同施設では次の三つの目標を掲げ、生産者の安定生産・安定収入と「純情産地いわて」の園芸生産拡大に取り組んでいきます。
(1)中山間地での施設栽培による園芸高収益栽培品目モデルの構築と、既存施設への普及を考慮した低コスト技術や省力化技術などの導入
(2)「みどりの食料システム戦略」に対応した農業施設の運営による生産量向上と持続性の両立
(3)園芸育苗センター、うぃずOne展示圃(ほ)場、先進園芸実証農場の3施設を一体化し、県本部園芸生産施設の拠点化による育苗から生産までの野菜品目栽培技術の普及
最新システムを導入した実証開始
実証農場では、県内初となる「ヤシ殻培地を使用したピーマンの養液隔離床栽培」と「排液リサイクルシステム」を導入しました。
養液隔離床栽培は、土壌伝染性の病害リスク回避と、場所を選ばない生産が可能となります。また、従来圃場外に捨てていた植物に吸収されなかった養液を培養液として再利用することで約3割の肥料削減効果が期待できます。さらに、保温・遮光カーテン設備、環境制御システムなどの農業ICTの導入のほか、木質バイオマス暖房やヒートポンプを使用した中山間寒冷地域における加温効果の検証を行います。
来年度にはワイヤーつり下げ式収穫ロボットを導入予定で、県内の労働力不足・人件費削減対策として実証試験を行います。
実証農場では3月下旬にピーマンの定植を行い、4月下旬から12月にかけて収穫を実施。ハウス2棟で県平均の2倍にあたる10a当たり収量20tを目指します。