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広報・調査部

インタビューシリーズ“発信”する農業者 第5回 小葉松 真里 さん(フリーランス農家)

「フリーランス農家」として働く私の情報発信 就農ではない農業との新しい関わりを広めるために

 インタビュー企画「“発信”する農業者」の第5回は、インタビュアーのファームサイド(株)の佐川友彦さんが、「フリーランス農家」の小葉松真里さんにお話を伺います。


私が見つけた就農ではない農業への新しい関わり方

佐川友彦さん 早速ですが、「フリーランス農家」とは何でしょうか。

小葉松真里さん フリーランス農家はどこの農地にも属さず、生産者の繫忙期に合わせて全国各地の農場で農作業の手伝いをしながら、商品開発やイベント企画など農業に関わる全般的なことも請け負う働き方を示す言葉として私が考案しました。

小葉松さんの年間スケジュール
 

佐川さん 自ら生み出された言葉なのですね。そもそも、なぜフリーランス農家になろうと思ったのですか?

小葉松さん きっかけは三つあります。一つ目は「農業をしたい!」という思いはあったものの、“普通”では既存の生産者には及ばないと感じ、ならば農業への新しい関わり方を自分で作ってしまおうと考えたこと。二つ目は自分の強みである情報発信や企画、コミュニケーション能力を生かして農業に関わりたいと思ったこと。三つ目は、一年を通して農業に関わりながら生活できる方法を見つけたいと思っていたことです。これらをかなえられるのがフリーランス農家でした。

佐川さん 今のお話だけでも小葉松さんのアクティブさが伝わってきますが、一年を通して全国をどのように移動されているのですか?

小葉松さん 年によって異なりますが、2023年は5月に北海道で田植えをし、6月は和歌山県の梅の生産者の元で働き、夏は北海道でさまざまな品目の生産者の畑に足を運んでいました。冬の今は沖縄の生産者の元で働いていますが、終日農作業に携わっているわけではなく午前中は野菜収穫の手伝い、午後はライターなど他の仕事をしています。

フリーランス農家を通して見えてきた気づき

佐川さん 生産者とはどのような交流がありますか?

小葉松さん 関係の深い生産者は、次の拠点先に移動する前に「来年もよろしくね」と声をかけてくれます。交流を深める中で、「農業の今を発信してほしい」と抱えている苦労や課題、熱い思いを語ってくれることもあります。

佐川さん それは小葉松さんだからこそ聞けるお話ですね! 生産者以外の方とも交流はありますか?

小葉松さん お世話になっている和歌山県の生産者の所へ、取引先の三つ星レストランのシェフが援農にきて作業後に料理を振る舞ってくれるなど、各地域で異業種交流ができています。また、鹿児島県沖永良部島では生産者と共に役場や商工会を巻き込んでマルシェを開催しました。狭いコミュニティーだからこそ、やりたいことを形にできるところが面白いです。

佐川さん 小葉松さんの発信力が生かされた活動ですね。全国各地の生産者を訪れる中で気づいたことはありますか?

小葉松さん 生産者が抱えている人手不足などの課題は地域に限らず一緒ですが、品目、土地・人柄などはそれぞれ異なるので、全ての地域に同じ解決方法で対応することは難しく、地域ごとにアプローチする必要があると感じました。

佐川さん 表面上の課題は同じでも根本をたどるとそれぞれの個別な課題の本質が見えてくるということですね。そんな小葉松さんが感じる農業界の変化って何かありますか?

小葉松さん 私のような働き方に興味がある人が増えてきていると思います。また、生産者も新しい農業の関わり方を求めているように感じます。

全国各地の農場で生まれる新たな交流
 
情報発信において 大切にしていること

佐川さん 関心が高まっている中、小葉松さんは自身の活動をどのように発信していますか。

小葉松さん 今は、農業専門誌での連載、新聞や雑誌のコラムなどメディアを通した発信や、自分が訪れた生産者やその経験をSNSで発信しています。また、講演会なども行っています。

佐川さん 幅広い媒体で発信をされる中で心掛けていることはありますか?

小葉松さん 生産者の人柄や思い、考え方が伝わる発信を心掛けています。そのためには、援農を通して生産者の普段の生活に関わりを持つことが重要と考えています。講演でも「SNSからの情報収集だけでなく、現場に行ってほしい」と伝えています。また、農業に関わり始めた当初から生産者に対する「リスペクト」は常に持っていますね。

佐川さん 小葉松さんの生産者へのリスペクトが、その人の良さを引き出した発信につながっているのですね。最後に今後の展望について教えてください。

小葉松さん これまで訪れた土地をつなぎ、多くの人が援農に参加できるプラットフォームを作りたいです。そのために、まずは今まで巡ってきた地域を中心に、拠点を作り、農業をやりたい人が滞在できる場を作りたいです。さらに、海外で日本産の需要を探り、発信することで生産者に、まだまだ日本の農業はいろんな場で需要がある!と勇気づけたいです。

佐川さん フリーランス農家として新しい農業の関わり方を開拓し、海外での活動も見据えた小葉松さんの今後の活躍を楽しみにしています。

和歌山での梅収穫
北海道での田植え

 
インタビュアー 佐川 友彦 さん
 東京大学農学部、同大学院修士卒。外資系企業を経て2014年から阿部梨園に参画。代表阿部氏の右腕業を務め、その改善ノウハウを「阿部梨園の知恵袋」としてオンラインで無料公開している。現在はファームサイド株式会社を起業し、講演活動や経営支援で各地を回り、農家の経営改善運動を全国へ展開中。著書『東大卒、農家の右腕になる。小さな経営改善ノウハウ100』(ダイヤモンド社)


小葉松 真里(こばまつ まり)さん
 北海道帯広市出身。地元新聞社や地域おこし協力隊などの経験を経て、2019年から季節の移り変わりに合わせ、旬な野菜と畑を求めて自分自身が移動し、農業に携わる「フリーランス農家」に転身。夏は北海道、冬は関東、四国、沖縄へ。その土地での農作業と自分の好きなこと・得意なことを掛け合わせて、農業を発信している。
 各地の生産者の元で農作業に携わりながら、ライターや、内閣府の関係人口創出事業や農林水産省の事業を活用し、北海道、沖縄を中心に生産者と消費者をつなげるフィールドワークの企画運営もしている。
 
フリーランス農家 小葉松真里 Official Site
https://kobamatsu.site

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