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福岡県本部

労働力支援特集(福岡) 企業との連携による新たな農業労働力支援

産地間連携・特定技能外国人・三者連携による企業副業・ボランティア

 福岡県は恵まれた自然条件のもとで、多種多様な農業が営まれています。代表的な農産物はイチゴ、柿、ミカン、麦など。県内基幹的農業従事者は2020年に約3.8万人で、15年に比べ約7600人減少しています(農業センサスより)。また、そのうち65歳以上の割合は約60%から約66%に増加し、高齢化が進んでいます。そこで福岡県本部では持続的な農業生産を実現するため、生産振興や地域経済の活性化を目指して、19年より(株)菜果野(なかや)アグリの農作業請負による支援を開始。22年度には、約7600人の労働力を供給しました。22年からは、九州経済連合会(以下、九経連)、農林中央金庫(以下、農林中金)との三者連携による支援、23年にはJA福岡中央会が推進中の農業労働力マッチングアプリの利用や特定技能外国人の産地間連携による支援、国の補助事業を活用した産地間連携・異業種連携による支援などに取り組んでいます。


九経連、農林中金との三者連携での支援

 福岡県本部、九経連、農林中金は、「地元の企業などで地元の農業を支える仕組み」を作るべく、22年2月に「農業の活性化に関する三者連携協定」を締結。三者それぞれが持つノウハウやネットワークを持ち寄り活用することで、担い手不足の解消や地産地消の推進など農業に係る社会課題の解決を図り、「魅力ある九州の農業」の実現を目指しています。

 具体的な取り組みとして、1日単位で働きたい人と生産者をつなぐマッチングアプリ「day work(デイワーク)」を活用した副業・ボランティアによる労働力支援や企業研修への農業研修カリキュラム導入などの取り組みを進めています。22年は二つの企業の社員がボランティアによる労働力支援、23年は一つの企業の新入社員研修で県内5カ所の農業法人や県本部の選果場などで農作業に従事していただきました。

 参加者からは、「またやりたい」などの声が上がり、農業未経験者でもきっかけさえあれば関心を持つ人が多いことや、企業研修では「コミュニケーションの重要性」や「仕事への向き合い方」など全ての仕事に通ずる学びがあることが分かりました。

 今後はマッチングアプリを企業、JA、生産者などに広く周知し、利用率を向上させるとともに、農業研修では、企業のニーズに合わせて各種研修などの導入を図り、農業の担い手不足の解消と農的関係人口の拡大につなげていきます。

三者連携スキーム図
 
産地間連携イメージ
 
産地間連携事業による農業労働力確保
(1)農業労働力確保支援事業を使った産地間連携・異業種連携

 県本部では、農水省が行う23年度の農業労働力確保支援事業の実施主体となり、産地間・異業種連携の取り組みを(株)農協観光とともに「福岡農業ツアー」として実施しました。

 昨年度、福岡県と大分県より労働力を支援した山形県と北海道から、11月に県内の柿農家に6人、ミカン農家に4人の労働力を支援していただき、福岡県と北海道・山形県の産地間連携ローテーションが実現しました。

 また、大都市圏に住む農業に興味・関心の高い層を対象に、ウェブやSNSなどで農作業参加者を募集する異業種連携にも取り組み、10~1月にイチゴ農家・農業法人で合計15人が収穫前作業や定植作業などに参加しました。

 参加者は交通費や宿泊費が補助されるため、少ない負担でツアーに参加できます。さらに農家側は未経験者を受け入れることへの抵抗感が薄れたという声が聞かれ、今後未経験者を受け入れる素地づくりの一助になったと考えています。継続のためには旅費補助などの課題が残りますが、今後は行政などと連携して課題解決に取り組むことを検討しています。

産地間連携スキーム図
今年度の受け入れ状況
「福岡農業ツアー」のチラシ

 

ミカン収穫作業
イチゴの収穫前作業(1)
イチゴの収穫前作業(2)
 
 
(2)特定技能外国人による産地間連携の取り組み

 JA新おたる(北海道)とは、23年11月より県本部施設で特定技能外国人の産地間連携のトライアルを開始しました。

 同JA管内のミニトマト農家で雇用されているインドネシア人等の方々の一部は、シーズン終了後の11~4月は仕事がなく帰国していました。一方、福岡県ではその時期が「博多あまおう」の最盛期で選果場の人手不足が深刻な状況であり、福岡県側の受け入れ態勢を整備すれば、産地間連携としての取り組みが可能と判断。トライアルでは労働者派遣事業を行う地元企業ジャムセレクト(株)の協力を得て約40人を県内4施設で受け入れています(24年4月までの予定)。

 例年、選果場では労働者の入れ替わりが激しく、都度作業説明などに時間を取られ、作業効率がよいとは言えない状況です。しかし、農作業経験があり、日本語も通じる労働者が約5カ月間確保できれば、作業効率も上がり、生産性向上につながることが期待されています。

 期間を通じた労働者の作業量や住宅・通勤手段の確保に課題もありますがトライアル結果を踏まえ、いずれは県内農家・JAなどに展開を検討しています。

特定技能外国人の産地間連携イメージ
特定技能外国人作業風景(広域集出荷施設「県南VFステーション」)

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