労働力支援特集(千葉) 労働力支援事業+ドローンによる農薬散布請負事業
生産基盤を維持拡大 労力補完し生産性向上へ
千葉県は周辺を海に囲まれた温暖な気候で、周年で作物が栽培できる全国でも有数の農業県です。特産品は野菜・果樹・ラッカセイなどがあります。都市部が近いため人口も多く、新規就農希望者も年々増加しています。しかし、農業就業人口全体は全国と同様に高齢化が進行しており、労働力の不足や作付面積の減少傾向が続いています。そこで千葉県本部では生産基盤の維持拡大と生産性向上に向け、2019年から労働力支援事業とドローンによる農薬散布請負事業の構築に向けた取り組みを開始しました。初年度は研修や現地視察などの情報収集から始まり、現在では労働力支援事業(4JA)とドローンによる農薬散布請負事業(12JA)を行っています。
労働力支援事業
JTB・農福連携
労働力支援事業は生産基盤の維持拡大・農業関係人口の増加を目指しており、大分県本部の農作業受委託事業を参考にパートナー企業との3者連携による農繁期の労働力確保を目標に取り組んできました。周年で作物が栽培できる気候を生かし、広域(複数JAでの農繁期の移動)での労働力支援事業を計画。20年からパートナー企業(運送会社)とB型福祉事業所※の施設外就労による農作業委託連携、21年からは(株)JTBとの連携も開始しました。
農福連携事業は主に就労継続支援A・B型事業所※との農作業受委託に取り組んでおり、作業は圃場(ほじょう)での定植・収穫などの作業と、選別・袋詰めなど施設内での作業があります。積極的に取り組んでいる3JAは“地域との連携”というキーワードを掲げており、目的は新規就農者が地域へ溶け込む第一歩、地域特産品の拡大などさまざまです。農福連携は単なる労働力確保ではなく、福祉の持っている能力(飲食店経営・食品製造・内職など)との融合で農業のさらなる発展を図ります。今後は行政とともに他分野との連携も計画していきます。
JTBとの連携はJAのダイコン選果場の安定稼働に向けた農作業受委託の取り組みです。10月末~5月の期間限定で稼働する選果場は、作業員の高齢化と人員の確保が課題でした。JTBと連携することにより、今まで作業に参加することのなかった層の作業員の確保ができ選果場の雰囲気が明るくなりました。JTBを介した参加者からは「県民なのにこんなにおいしいダイコンがあることを知らなかった」など、特産品を知る良い機会になったという声が多く上がっています。昨年度からは特定技能実習生も加入し、選果場の安定的な労働力確保に取り組んでいます。
計画していた「広域で取り組む労働力支援」には及んでいませんが、各JAの取り組みは拡大しており、今後はJA同士が連携した広域労働力支援事業に向けて、関係機関と連携を強化します。
※就労継続支援事業…一般企業で働くことが困難な方に対して就労機会を提供する福祉サービスで、雇用契約を結び利用するA型と結ばないB型の2種類に分類される。
農薬散布請負事業
外部委託で役割分担
水稲や園芸品目生産者の農薬散布などに係る労力を補完するために、19年からドローンによる農薬散布などの請負について協議、検討を開始しました。当初は県本部によるドローンオペレーターの養成、作業請負なども検討しましたが、最終的にパートナー企業のドローンプロフェッショナルサービス(株)(以下、DPS社)に外部委託することで、県本部と企業で役割分担をし業務効率化につなげています。
23年度9月末の請負実施面積は、水稲で400ha(前年対比300ha増)、園芸品目で21ha(前年対比10ha増)となりました。水稲では空散による共同防除、園芸品目では防除作業に多大な労力がかかるサツマイモ、バレイショ、サトイモ、トウモロコシなどの露地野菜で請負面積が増加しています。
事業のポイントは、営農管理システム「Z-GIS」を活用している点です。JAにはドローン防除計画時に「Z-GIS」で圃場登録をしていただき、クラウド上で圃場情報を県本部、DPS社と共有します。事前に圃場が確認できるため、準備から実際の散布に至るまでがスムーズに進みます。
今後は受発注、代金精算について、JA購買システムを使用することも検討しています。
これからもJAとともに地域課題を共有し、生産の維持・拡大に向けた労働力の確保についてさまざまな策を併せて実行し、解決を図ります。