JAアクセラレーター(第5期) 採択企業紹介(1)
AgVenture Lab(アグベンチャーラボ)は、スタートアップ企業とJAグループの事業共創の取り組み「JAアクセラレーター第5期」で10社を優秀賞として採択しました。今号では4社を紹介します。
株式会社ミライ菜園
病害虫防除を革新する発生予報AIアプリ
代表の畠山友史さんが2019年に愛知県で創業したスタートアップで、病害虫診断AI&栽培SNSアプリ「SCIBAI(サイバイ)」を提供しています。スマートフォンにアプリをインストールして写真を撮るだけで病害虫診断ができ、元々は家庭菜園向けに提供していました。
一方でプロの農家にとっては、近年の気候変動の影響で病害虫の発生予察と予防が難しくなっている課題がありました。そこで「SCIBAI」で蓄積された病害虫発生履歴のビッグデータを活用し、人工知能(AI)が病害虫発生予報を提供するアプリ「MIRAI(ミライ)」を開発。毎日の病害虫予報に加えて、病害虫発生マップ、グラフでの発生分析で予防的防除を強力にサポートします。
JAアクセラレーターの支援期間では、キャベツ、ブロッコリー、タマネギの秋冬作に向けた実証協力産地の獲得や、「MIRAI」の機能強化・普及に向けた取り組みを支援します。
株式会社輝翠(きすい)TECH
AIロボットで労働力支援、家族系果樹農家の所得を向上させる
代表のTamir Blum(タミル・ブルーム)が2021年に創業した東北大学発のスタートアップで、宇宙探査技術を取り入れた農業用AIロボットを開発しています。
ロボットは、農家を視覚的に識別して追従するフォローモード、保存した2拠点間を自動で移動するAtoBモードなどを搭載し、農家の収穫・運搬作業を支援します。また、月面探査機で使用していた画像認識技術とAIを使用して、農場の状況を把握し、ロボットを自動的に走行させるという取り組みも行っています。この技術はロボットの走行以外に作物の状態や農場のセンサーデータを収集することも可能です。単に走行するだけでなく、情報を収集しながら走行するという点に強みがあります。
JAアクセラレーターの支援期間では、ビジネスモデルの検討や生産者ニーズの把握、実証試験などを通じたサービス強化に向けて支援していきます。
ASTRA FOOD PLAN株式会社
乾燥・殺菌装置「過熱蒸煎機」で「かくれフードロス」の削減とアップサイクル
代表の加納千裕さんが2020年に埼玉県で創業したスタートアップで、過熱水蒸気による乾燥殺菌装置「過熱蒸煎機」と過熱蒸煎粉「ぐるりこ」の販売によるフードロス削減に取り組んでいます。一般的に認知されているフードロスは、製品の売れ残りや食べ残しなどを指しますが、同社が取り組むのは、農産物の生産・流通現場を含む生産工程で発生する広範なロス、いわゆる「かくれフードロス」の削減です。
「過熱蒸煎機」は、フリーズドライや熱風乾燥機に比べて、乾燥時間が短く連続使用が可能であり、乾燥と同時に殺菌も可能。加えてボイラーレスのためコスト面での優位性が特長です。この「過熱蒸煎機」を用いて端材などを粉末化した「ぐるりこ」を販売するアップサイクル(創造的再利用)の取り組みを通じて、生産者の所得向上や持続可能な経営に貢献することを目指しています。
JAアクセラレーターの支援期間では、生産・流通段階のかくれフードロスの把握と、「ぐるりこ」の用途開発や販路開拓などを支援していきます。
mizuiro株式会社
おやさいクレヨン(R)を軸としたアップサイクルブランド化事業
代表の木村尚子さんが2014年に青森県で創業したスタートアップで、野菜残渣(ざんさ)などを活用したカラフルなクレヨンを開発・販売しています。これまでに開発した「おやさいクレヨン」は、累計17万箱以上の出荷実績があります。大手企業などのOEM生産も受けており、7万箱以上の出荷実績を通じて合計10tを超える野菜や果物の残渣をアップサイクル(創造的再利用)しています。これらの製品はノベルティ(販促品)として提供されるほか、教育施設への寄贈などにも活用されます。多くの子供たちに届けることで、遊びを通じて食料や環境問題について考える機会を創出しています。
この循環型の取り組みを広げていくため、JAアクセラレーターの支援期間では、新たな用途としてアップサイクル段ボールや飼料の開発、47都道府県の「おやさいクレヨン」の開発を目指し取り組んでいきます。