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広報・調査部

【AgVenture Lab発 スタートアップ インタビュー】
株式会社エアロネクスト 代表取締役CEO 田路圭輔さん

ドローン配送と陸上輸送を融合し物流を最適化 “新スマート物流”で地域課題の解決と活性化目指す

 JAアクセラレーター第3期に採択された(株)エアロネクストは、空を社会インフラとして活用するための技術を開発し、ドローンを使った新たな物流を構築することで社会課題の解決や地域活性化に取り組んでいます。代表取締役CEO 田路(とうじ)圭輔さんにお話を聞きました。


田路圭輔 代表取締役CEO
 
御社のドローンの特徴を教えてください。

 カメラを搭載した空撮用のドローンがよく知られていますが、空中の1地点で滞在(ホバリング)する場合とモノを運ぶ場合に必要な技術は異なります。空輸の場合、重心がとてもデリケートで、いかに安定させるかが重要です。カメラの代わりに荷物をつるせばいいという話ではありません。当社が開発した物流専用のドローンはボディーの中に入れた荷物を水平な状態で運ぶことが可能です。流線形のボディーは飛行時の前面からの空気抵抗が小さいので非常に推進力があり、長く遠くまで速く飛ぶことができます。ドローンが傾いても軸がぶれず荷物を水平な状態で保つことができるので、荷物に対する事故も起こりにくくなります。

「4D GRAVITY(R)」を搭載した量産型物流専用ドローンAirTruck
 
ドローン物流に着目したきっかけは?

 この技術は世界を変える可能性があるが、広めていくには製品化が重要だと考えました。そこで山梨県小菅村で飛ばす実証を始めたのですが、ここは過疎地域で人の移動も困難な状況でした。過疎地域の住民が不便に感じていることは配送や集荷業務です。買い物が不便とか、医療を受けるのにも時間がかかるなどの問題がありました。そこでドローンが使えるのではないかと考え、当社のドローンを活用した新しい物流システム「SkyHub(スカイハブ)」を立ち上げました。既存の物流とドローン物流をつなぎ、地上と空のインフラを接続することで荷物の集約と最適な手段により効率的な配送を実現するプラットフォームです。

活用事例を教えてください。

 今取り組んでいる北海道上士幌町の場合、人口の約8割の人が市街地に住み、残りの人たちが過疎地域の農村部に住んでいます。物は市街地まで届いているが、そこから過疎地域に運ぶのに時間がかかるという状況でした。トラック配送はコストがかかるし、人件費の問題もあります。しかし、運ぶ荷物は増えている。トラックでの配送に限界を感じていました。また、過疎の住民が取りに来るにしても時間がかかってしまう。そこをドローンで運ぶ。ドローンは手段の一つです。すべてをドローンで運ぶというわけではなく、配送のシステムを組み、効率が悪い部分をドローンにやってもらう。上士幌町の場合、市街地は陸、過疎地域へは空を使います。既存の物流と新しい技術を融合させ、その地域のニーズに合った物流システムを作ることで地域の課題解決にもつながります。

物流システム「SkyHub」の概要図
 
上士幌町では和牛新鮮受精卵の配送実験もありましたね。

 採卵した牛の受精卵を冷凍保存せずに新鮮卵の状態のまま、ドローンで上士幌町内の農家宅へ配送し、移植実験を行いました。振動を抑え、直線距離で空輸することで配送時間が短縮でき、受胎率の向上も期待できます。その後、トラックによる輸送との比較実証も行い、配送自体は振動や温度管理にも問題なく、トラック配送と遜色ない結果が得られました。

ドローンでの和牛新鮮受精卵の配送実験
 
なぜJAアクセラレーターに応募を?

 過疎の問題は日本全体の社会問題であることを知りました。過疎地域にはほぼ1次産業が絡んでいます。そして地域には必ずJAがあります。地域にある1次産業の課題も同時に解決したいと思い、JAアクセラレーターに応募しました。

地方や農業分野での活用の展開として考えていることはありますか?

 今、地域のインフラをJAが担っているケースも多い。例えばJAの農産物直売所をドローンデポ(拠点)として、ドローンで生産者に日用品や農業資材を届ける。逆に生産者には農産物を載せてもらう。そうすることで、直売所のスタッフは農産物の集荷に行く手間を削減できます。重荷になっている配送業務をドローンが行うことで、本来やるべき仕事に時間を当てることも可能になります。

今後のことを教えてください。

 10月には茨城県境町、群馬県安中市と連携協定を結び、敦賀市では全国で3例目となるSkyHub社会実装がスタートしました。今後、高齢化とともに日用品などの生活物資を届けてもらうサービスが大事になってくるので、地域のデリバリーインフラを作ることが重要だと考えています。その地域の荷物をまとめ、ドローンやトラックなどさまざまな輸送手段を組み合わせて最適な物流を構築することで、地域が抱える課題の解決と活性化を目指します。

(株)エアロネクストの サイトはこちら
https://aeronext.co.jp/
 
JA全農ウィークリー 2022年7月25日号
ドローンで和牛新鮮受精卵の配送実験を実施

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