【50周年対談】なくてはならない全農へ これからの50年も挑戦
野口 栄 代表理事理事長 × 作山 巧 明治大学農学部食料環境政策学科専任教授
全農創立50周年にあたり、代表理事理事長の野口栄が、明治大学農学部食料環境政策学科の作山巧専任教授と対談しました。
(本対談のフルバージョンは3月30日発行のJACOM農業協同組合新聞ならびに同Webでご覧いただけます)
作山巧氏 全農が創立50年を迎えました。どのように受け止めていらっしゃいますか?
挑戦し続けてきた歴史 次代につなげるべく加速
野口栄理事長 この50年は国内外の経済環境、食と農を取り巻く環境にも大きな変化がありました。その時々の自然災害や事業環境に対応するべく挑戦し続けてきた歴史だったと思います。これまで全農の50年を支えてくださった諸先輩方、ご指導いただいた関係者の皆さま、そしてなによりJAグループならびに組合員の皆さま、消費者の皆さまに心より感謝を申しあげます。今の世代はこの挑戦の歴史をしっかりと受け止め、次世代につなげるべく加速していかなければならないと考えています。
作山氏 設立当時、当時の経営陣が六つの目標※を定めたとお聞きしています。こちらの進捗(しんちょく)状況と、どのように評価されているかお聞きできますか?
※全農設立時の6つの目標 (1)生産販売一貫体制を確立し、総合的事業推進を行う。 (2)都市に対する販売力を一層強化する。 (3)生活活動を飛躍的に発展させる。 (4)系統を一貫する物流システムをつくりあげる。 (5)加工事業への進出を含めた新事業分野、事業方式を開拓する。 (6)企画・調査・情報の機能を拡充強化する。 |
先見性ある設立時の目標 引き続き取り組みを強化
野口理事長 50年前に定められた目標ですが現在の課題にもつながる、大変に先見性のある目標です。
生産販売一貫体制は現在その完成に向けて取り組んでいるところです。これまでの生産資材などの購買と米・園芸・畜産などの販売という事業の切り分けではなく、耕種・畜産といった品目別の購買から販売まで一貫したバリューチェーンで事業を捉えており、例えば実需者のニーズに基づく産地へ提案を行うなど、その完成に近づけるべく次期中期計画でも取り組みます。
都市に対する販売力強化については、アライアンス戦略が有効です。スシロー様やファミリーマート様との資本提携に始まり、生協様やその他チェーンストア、コンビニエンスストア様との協業拡大により実現しつつあります。
生活活動の発展については、地方人口の減少などの問題もあり、本会グループだけで解決できる課題でなくなりつつあります。地域生活のインフラとしてAコープなどの生活店舗やSS、それらの維持が難しい場所では移動購買車やコンテナ式給油所などでサービスを維持する取り組みを進めています。
一貫した物流システムについては、JAを超えた県域、県域を越えた産地・消費地での農産物物流などに取り組んでいます。また農機や肥料農薬の配送センターなどの資材物流も整備してきています。
加工事業への進出を含めた新事業分野・事業方式ですが、昨今の即食・簡便化ニーズの高まりに対応して、食肉販売会社での包装肉加工や総菜事業の拡大、パックごはん事業への参入などに取り組んでいます。
企画調査情報機能の拡充において、代表例はJA経済事業改革への支援でしょう。収支改善メニューの提案と実践を行い、成功事例の横展開などに取り組んでいます。
いずれの事業も時代の変化に対応して取り組んできたものと評価します。ただしこれからも事業環境の変化はもっと大きく、かつスピードが速くなると予測します。これらの目標への対応は終わることはありませんので引き続き取り組みを強化してまいります。
自己改革に一定の成果 事業強化さらに継続
作山氏 規制改革推進会議の提言に基づき2017年から取り組んでいる自己改革の進捗とその評価について教えてください。
野口理事長 直接・買取販売の拡大や資材価格の低減など、それぞれの課題で自己改革に取り組んでまいりました。例を申しあげますと、肥料の銘柄集約や農薬の大型規格によるコスト低減や、共同購入大型トラクターの取り組みです。さらに現在、中型の共同購入トラクターに取り組んでおります。
自己改革の取り組みについて、一定の評価を受けたものと受け止めていますが、次期中期計画でも自己改革による事業強化を継続して取り組んでいく考えです。
作山氏 ウクライナ情勢などを受けて最近の国際マーケットでの資材価格高騰が、これまでの自己改革の取組効果を打ち消しています。
野口理事長 飼料穀物、肥料、燃料まで、およそ農業生産に関わる全ての資材の価格がかつてない勢いで高騰しています。また、原料確保を含めた、資材の安定供給が大きな課題となっています。本会は原料調達国の変更・多元化などにより安定確保・安定供給に取り組み、例年並みの製品供給数量を確保することができています。これまでの自己改革が、現在の対応につながっているとも評価できます。
作山氏 最後に、組合員、消費者へのメッセージと、次の50年に向けた決意表明をお願いします。
野口理事長 まずは50年間、皆さまに本会の事業をご支援いただきましたこと、心より感謝申しあげます。そして、これからの50年も挑戦を続け、「持続可能な日本の農業と食の提供のため、なくてはならない全農であり続ける」ことで、皆さまの営農と生活に貢献し、より良い未来を築いてまいりたいと思います。引き続き変わらぬご支援よろしくお願いいたします。
JAcomでの対談フルバージョンはこちら
https://www.jacom.or.jp/noukyo/tokusyu/2022/03/220322-57470.php