農家のバトンタッチ『事業承継』
事業承継ブックシリーズを作成
全農は、日本農業の最重要課題の一つである世代交代を進めるため、事業承継の取り組みを支援しています。2017年1月に親子版、18年3月に営農集落版、19年4月にハッピーリタイアブック、20年7月に部会版の事業承継ブックを発行し、TAC活動を起点とした事業承継支援の取り組みを全国のJAや県域担い手サポートセンターなどへ提案しています。
日本の農業が危機に直面している?
現在、日本の農業の生産現場は基幹的農業従事者数の7割を65歳以上が占めるなど、深刻な高齢化に直面しています。10年後には現在65歳の生産者も75歳となり、現在の日本の平均健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されず生活できる期間)を超えることになります。そのような状況の中、71%と実に多くの経営体が後継者を確保していないという状態です。
農業経営の10年後を考える
多くの経営者が平均健康寿命を超える10年後、経営者の引退が現実のものとして目の前に立ちはだかります。そのときに現在の農業経営をどうするべきでしょうか。
現在の経営者にとっては、これまでの歴史の中で受け継がれてきた農業経営をそのまま後継者に譲り渡す「承継」(=「事業承継」)をすることが望ましいと考えられます。この「事業承継」とは、「現在の経営者が持っている『資産・経営』を全て後継者に引き継ぎ、現在の営農を将来に渡って継続させること」と定義づけられます。『資産・経営』とは農地や農機、現金などの資産に限らず、取引先や生産技術、経営の理念など、農業経営に必要なあらゆる事柄を指します。
事業承継と相続は違うこと?
事業承継と相続は資産や経営を受け継ぐという意味で同列に語られることが多いですが、実は大きな違いがあります。
経営者の死亡が契機となる相続と違い、事業承継は経営者が元気で判断力があるうちに事業を引き継ぎ始めるため、情報、技術、その他農業経営に必要な全ての事項を、時間をかけて引き継ぐことができます。経営者にとっては状況を確認しながら、受け継いでほしいこと、これまで農業経営にかけてきた想いを伝えることができますし、後継者にとっては経営者と相談しながらこれまでの経営を踏襲した上で自分なりの農業経営を目指すことが可能となります。ただし、双方が納得しながら全てを引き継ぐには長い時間が必要であるため、計画的に、何よりも経営者が元気なうちに一刻も早く取り組みを始める必要があります。
TAC活動を起点とした事業承継とは
事業承継で最も重要なことは「話し合い」を行うことです。まずはお互いの意思を確認しあい、同じ方向を向いて計画を策定することが必要となります。
この話し合いを円滑に進めるためには「冷静な第三者」を交えた話し合いにすることが有効です。この「第三者」は、(1)経営者、後継者、どちらにも寄り添うことができること、(2)感情的にならず常に冷静で、中立的な立場の発言ができること、(3)経営者、後継者どちらとも信頼関係があり、当該経営体に対して理解が深いこと、という三つの条件を満たしていることが必要です。本会では、JAの「地域農業の担い手に出向く担当者」であるTACが担い手との信頼関係の面からこの役割を担うことがふさわしいと考え、TACを中心とした事業承継支援の取り組みを全国各地で進めてきました。
また、その取り組みをフォローするため、本会では事業承継ブックシリーズを作成しています。事業承継ブックはTACが「冷静な第三者」の役割を果たすという前提の元、両者の間でどのような話し合いをして、準備を進めていくかについてワークシートにまとめたものです。
事業承継ブックを活用し、円滑な事業承継を実践しましょう。
事業承継ブックは以下からご覧いただけます。冊子をご希望の方は本所TAC推進課までご連絡ください。
https://www.zennoh.or.jp/tac/business.html