プロフェッショナルを追う(4)九州広域施設事業所 福岡施設事務所
一級建築士 瀬利 聡さん
生産現場での収穫から消費者の食卓へ 産地と流通を支える農業インフラの建設
全農グループには専門的な業務に従事している職員がいます。今回は、施設農住部九州広域施設事業所福岡施設事務所に所属する一級建築士、瀬利聡(せり さとし)さんに迫ります。
――瀬利さんの仕事内容について教えてください。
九州広域施設事業所は福岡・長崎・大分・佐賀に出先事務所を持ち、JAから依頼を受けてライスセンターや選果場、パックセンターなどあらゆる農畜産物の集出荷施設の設計・監理を行っています。その中で私は福岡を担当しています。
全農の施設事業は「施主代行」という系統組織ならではの事業方式で対応しているため、私は設計図を描くだけでなく、依頼主(施主)であるJAに代わって、施設建設計画への支援や建築候補地の調査、施工会社の選定や竣工までの工程管理など、計画から引き渡し・アフター対応に至るまでの業務全般を担当しています。
――全農に入会したきっかけは?
実家が農家だったため、大学で建築を学ぶ頃から「農業と建築」をどう結び付けるかを考えていました。当時は全農に施設部門があるとは知らず、民間企業に就職しました。構造設計という仕事をしていたのですが、実際に建築現場監理に赴き、計画から竣工まで幅広く対応する仕事がしたいと考えていた頃、全農と出合い、入会に至りました。
――全農が自ら施設事業に取り組む意義はどこにあると感じますか?
生産者、JAに近い立場として一緒になって建築に取り組めるところです。施設建築は計画から設計まででも2、3年、竣工まで4、5年かかることもある一大事業です。計画段階でJAから何度もやり直しの相談を受けることも珍しくありません。コストを抑えつつどれだけ利便性を高められるか、「農業に貢献する」という思いを共にするからこそ、意見を交えてより良い施設を目指せます。また、農業施設という特殊な建築事例を全国各地で担うことで蓄積されているノウハウも全農の大きな強みです。
入会後、生産現場から消費者にどのように農産物が届くのかを自分なりに勉強してきましたが、農業施設は産地と流通を支える農業インフラの機能を果たしていると思います。プレッシャーを感じることもありますが、完成した施設が順調に稼働し、人が働く姿を見るのはとてもうれしいですね。
――今後の目標は?
九州では近年豪雨被害が多発しており、施設の災害対策強化が求められています。JAとして、生産者から出荷される農産物を決して無駄にはできません。青果物を保管する冷蔵庫では停電対策などが必須となります。今後も知見を積み重ねて、より災害に強い施設の設計を進めたいと考えています。知見を広げるため、これまで担当していない畜産系の施設にも関わっていきたいです。