プロフェッショナルを追う(1)家畜衛生研究所クリニック東日本分室獣医師、宮野安奈さん
病気にかからぬ予防策提案
全農グループには専門的な業務に従事している職員がいます。今回は、家畜衛生研究所クリニック東日本分室の獣医師、宮野安奈さんに迫ります。
――家畜衛生研究所について教えてください。
家畜の予防衛生に関わる部署で、疾病予防のための技術・商品開発を行う研究開発室、家畜や畜産物の衛生検査を行うクリニックセンターと農場での生産指導を行うクリニック分室があります。分室は北海道・岩手・東京・岡山・福岡にあり、私は東日本分室(東京)に勤務しています。
関係機関と連携し 農場で疾病対策
――仕事の主な内容は?
生産現場の生産性向上のサポートを行うことを目的に、農場での疾病対策に携わることが多いです。JAや地域別飼料会社、県本部などのJAグループ関係者からの要請で農場を訪問し、農場での病気の状態や衛生管理の状況を把握した上で、必要に応じて検査を提案します。検査は、血液・糞便(ふんべん)・鼻汁スワブなどを採材してクリニックセンターへ検査を依頼し、検査結果を活用しながら、農場の状況に応じた衛生対策の提案を行っていきます。生産者さんやJAグループ関係者を対象に、衛生に関する勉強会の講師を務めることもあり、予防衛生の大切さを伝えています。
――予防衛生とは?
例えば肉牛の場合、生まれてから食肉になるまで30カ月近くかかります。人間も動物も子どものころは体力もないし、免疫も未熟で弱い。病気にかかると生育が停滞したり、治療にコストがかかったりしますし、何より生産者の方々の精神的ストレスが大きく、さまざまな影響があります。いかに病気などにかからずに育てるか。以前に比べて予防に重きを置く生産者の方が増えているように思います。
農家と一緒に取り組み 現れた成果に手応え
――やりがいは?
この仕事は何か対策を行えば劇的に改善するということばかりではありません。でも農家さんと一緒に取り組んで、小さいながらも成果が出たという話を聞くとやりがいを感じます。また、クリニック分室は全国にあるので他県の事例を知ることもできるし、飼料のことで分からないことがあれば同じ畜産生産部にある飼料畜産中央研究所、繁殖のことならET研究所に聞くこともできます。専門機関が連携して総合的に対応できるJAグループの強みの一員でいることにもやりがいを感じます。
――JAの担当者との連携も大事ですね。
牛の場合はJAの担当者を通じて農家さんとお話することも多いです。日々生産現場を巡回しているJAの担当者だからこそ分かる変化や課題を伝えていただけると、より精度の高い提案ができます。
農家ごとに解決策を 提案しレベルアップ
――今後の抱負は?
一番は個々の農家さんごとの解決策をどんどん提案して、全体的なレベルアップのお手伝いができればいいなと思っています。JAグループならではの総合力を生かし、さまざまな方面からのアプローチで各農場の課題について提案できるようになれたらと思っています。