【AgVenture Lab発 スタートアップインタビュー】
農作業の機械化、自動化で農業の価値を未来につなぐ
(株)レグミン代表取締役 成勢卓裕(なるせ たかひろ)さん
アグベンチャーラボ主催「JAアクセラレーター第6期」に採択された(株)レグミンは埼玉県深谷市に本社を構え、農業現場で役立つ機械化・自動化技術を提供するスタートアップです。代表取締役の成勢卓裕さんに話を聞きました。
※JAアクセラレーターとは、JAグループの持つ幅広いネットワークとリソースを用いてスタートアップの事業成長を支援するプログラム

──レグミンの事業とその特徴について教えてください。
レグミンは、農業の機械化・自動化を通じて、農作業の効率化と生産性の向上を目指す会社です。現在、大きく三つの事業を展開しています。
一つ目は「自律走行ロボットの開発」です。
現在はネギを中心に、キャベツやブロッコリーなどの露地野菜で活用できる自律走行ロボットの開発を進めています。ただ単にロボットを作るだけではなく、私たち自身がオペレーターとなり、生産者の方々に「サービス」として提供しているのが特徴です。
圃場(ほじょう)面積や農薬使用量などに合わせた個別見積もりを行ったうえで生産者の方々から依頼を受け、農薬散布などの作業をロボットが代行します。

二つ目は「圃場カメラの 開発」です。
埼玉県深谷市のように畑が比較的小さく分かれている地域では、一つの農家が100枚、200枚の畑を管理しなければならないこともあります。広範囲の畑を効率的に監視するのは非常に大変なことから、既存の市販フィールドカメラよりも機能を絞り、コストを抑えた監視カメラを開発しました。
生産者の方が効率よく畑の状況を管理できるようになるだけではなく、圃場の様子を記録・確認できるため栽培指導にも活用されています。
そして三つ目が「ポストハーベスト(収穫後の作業)の自動化」です。
ブロッコリーを一口サイズにカットする機械や、深谷市の特産であるネギの皮むきを自動化する機械を開発しています。現在、収穫後の加工工程には多くの人手がかかっており、労力負担が大きいことが課題です。こうした工程の自動化を進めることで、農作業の省力化や効率化に貢献したいと考えています。

──事業を立ち上げられたきっかけを教えてください。
前職では海外出張が多く、海外の農畜産物を見るたびに、日本のスーパーに並ぶ野菜の新鮮さや品質の高さに感銘を受けていました。そんな中、農業の人手不足深刻化が叫ばれるようになり、日本農業の未来について考えるようになりました。
特に印象的だったのは、オランダを訪れた際のことです。飛行機から広大なガラスハウスがずらっと並んでいるのを見つけ、調べてみると、オランダは九州ほどの面積しかないにもかかわらず、食料自給率が非常に高く、農産物の輸出も盛んでした。
「人手不足の中でも日本農業の特徴である『食の多様性』を守れる方法はないか?」と思ったのが、この事業を始めるきっかけでした。
──事業を展開するなかで感じる日本農業の課題とそれに対する レグミンのアプローチを教えてください。
日本農業の課題である人手不足・生産者の高齢化が進む中で、持続可能な農業を実現するためには、機械化・自動化を進めることが不可欠だと考えています。
ただ、農業の機械化といっても、一律に進められるわけではありません。作業工程は作物ごとに異なり、求められる機械の性能や品質もさまざまです。例えば、ネギの皮むきとブロッコリーのカットでは、機械化の方法がまったく異なります。そうした多様なニーズに対応するために、レグミンでは農薬散布やネギの自動処理といった具体的な課題から機械化を進めています。
──JAアクセラレーターの期間行ったこととその成果を教えてください。
期間中は、特にネギの皮むきロボットの開発に注力しました。
ネギの根元部分を自動で裁断するロボットの開発過程では、画像解析技術を活用しています。これまで、私たちが活動する深谷市のネギに関する教師データ(機械学習に利用する正解データ)は十分にあったのですが、他の地域のデータは不足していました。
そこで、全農の協力を得て、さまざまな産地のネギを取り寄せ、教師データの収集を行いました。これにより、全国各地の異なる品種のネギにも対応できる技術を開発するベースを構築することができました。
また期間中に、全国のJAや生産者とつながることもできました。深谷市では、ネギの皮むき作業は個人の農家が行うのが一般的ですが、他地域では出荷の方式や工程が異なります。そうした地域ごとの違いをJAグループの協力を得て調査したことで、今後の機械化の方向性を明確にすることができました。
この期間を通じて、全国のJAや生産者の方々からも関心を持っていただき、今後の事業展開の可能性が広がったと感じており、現在は全農群馬県本部とも試験栽培の取り組みを行っています。
──今後の展望を教えてください。
現在も取り組んでいる農薬散布の自動化について、深谷市内での普及を進めていきます。ネギの皮むきロボットも、引き続き研究開発を進め、全国の産地で活用できる形を目指します。
さらに今後は、JAグループと協力し、農薬散布やポストハーベストの機械化を全国に展開しながら、各地域のJAや生産者のニーズに応じた機械化の提案と中山間地域などを含む、より多くの農業現場で活用できる技術を提供していきたいと考えています。
日本の農業の価値を未来につなぐため、レグミンの事業である農作業の機械化・自動化を通じた支援を全国で進めていきます。
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