ごあいさつ

ごあいさつ

「生産者」「消費者」「職員」「経営基盤」 四つのバランスを意識した経営を

経営管理委員会 会長 折原 敬一

 協同組合運動に身を投じて、半世紀。

 そのスタートは、ゼロからのスイカ産地づくりに明け暮れた営農指導員であります。

 私の地元は、「雪とすいかと花笠のまち」で知られる山形県尾花沢市です。

 今でこそ、夏スイカ生産量日本一の産地、そして県内一、東北でも有数の和牛生産地として評価を得るに至りましたが、一朝一夕で産地化が図られたわけではありません。現場での失敗や幾多の課題と困難に立ち向かった生産者をはじめ、行政・JA関係者が一丸となり取り組んだ努力の賜物(たまもの)であり、次世代に引き継いでいかなければなりません。

 私が入組した昭和48年ごろは、養蚕の斜陽化や米の減反政策の導入などにより、新たな営農類型を模索する時代でした。そうしたなか、畑作振興と畜産振興は、重要な品目選択となり、行政の支援も得ながら、産地化(=ブランド化)に向けてスタートしました。

 そこで培った経験が、「現場主義」「組合員目線」という、私の確固たる信念となりました。

 その信念のもと、これまでの協同組合運動の集大成として、全農会長就任にあたり、私の決意を申し述べさせていただきます。

 私は、次の全農会長に求められる役割・使命は、「全農自己改革」の背景と実践をしっかりと振り返りながら、「食と農を未来へつなぐ」をキャッチフレーズとした中期計画を着実に実践するとともに、さらなる発展をめざし次世代へ継承することと考えております。昨年7月からの1年間、副会長として、菅野会長、乗富副会長とともに中期計画の実践にあたってまいりました。

 私の基本姿勢は、その継承であり、これからの3年の任期中においても、生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋になるという経営理念のもと、めざす姿である「持続可能な農業と食の提供のために〝なくてはならない全農〟であり続ける」ため引き続き邁進(まいしん)してまいります。

 それらを具現化するにあたって、「生産者」「消費者」「職員」「経営基盤」の四つについて、私の考え方を掲げます。

 第一の「生産者」については、生産現場に寄り添い、組合員の目線に立った施策を展開することです。

 全農の会員はJAですが、その組合員である生産者の営農継続、地域農業の振興がわれわれの存在意義であり、そのためには、生産現場、組合員の目線が何よりも重要となります。

 生活の根幹をなす食の安定供給のためには、食料安全保障は絶対不可欠であり、その具現化に向けて生産者のためになる施策を考えなければ営農継続はできません。

 全農をはじめとするJAグループは、今まさに原点に立ち返り、その実現に向け最善を尽くすことが重要であり、そのためには組合員の「目線」に加え、「目の数」も意識することが重要となります。全国約400万人の正組合員数のうち、園芸振興や畜産振興が進んだとはいえ、全国でみれば依然として、水田農業に関わる正組合員数が最も多いということを、しっかりと意識しなければなりません。

 第二の「消費者」については、訴求のあり方を深掘りすることです。

 これは、単に宣伝と広告を通して、国産の農畜産物を購入していただくことに止まらず、適正な価格形成への理解を得ていくための訴求ということです。

 また、労働力の確保や地域共同活動の維持という観点からも、消費者という立場に止まらず、地域農業を理解し応援していただくための訴求ということです。

 消費者=関係人口として、農業をもっと理解し応援していただく必要があり、そのためには、JAグループのキーメッセージである「国消国産」について、JAグループ一体となって幅広く訴求していかなければなりません。

 第三の「職員」については、職員のスキルを高め、一人ひとりが活躍できる自由闊達(かったつ)な職場風土を築くことです。

 言うまでもなく、組織は人であり、実際に業務を遂行していくのは、職員であり職場です。

 職場が明るく、職員に元気と活力がなければ組織は回りませんし、そうでない組織には優秀な職員は集まりません。

 「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇(あだ)は敵なり」とは、戦国武将武田信玄の名言であります。リーダーと部下の信頼関係を強固にし、業務に励めるような環境が大切であり、協同組合運動の実践者として、またJA経済事業のリーダーとして、高い志を持つ全農職員の能力をいかんなく発揮できる環境づくりを進めてまいります。

 第四の「経営基盤」については、経営の安定化と盤石化を図ることです。

 経営の安定なくして、第一、第二、第三の考え方を実践することなどできません。  安定した経営のもと、JAを通した組合員への還元、地域への貢献、職員・職場への投資、そのうえでの経営の盤石化を図り、「生産者」「消費者」「職員」「経営基盤」の四つのバランスを意識した経営を実践してまいります。

 また、環境変化にあたっては、その変化に柔軟に対応しながら、単純に前例を踏襲することなく見直すべきは見直したうえで、次世代に引き継いでまいります。

 以上の四つの考え方に基づき、〝なくてはならない全農〟であり続けるために、全身全霊をかけて全農会長の務めを全うする強い覚悟と決意を表明し、私の所信といたします。

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