【新春対談】全農経営管理委員会 菅野 幸雄会長×全農所属・卓球日本代表 石川 佳純さん
変化は成長へのチャンス、与えられた役割で一歩一歩努力し未来を切り開く
菅野幸雄会長 あけましておめでとうございます。
石川佳純さん あけましておめでとうございます。会長は就任されて2年と聞きました。昨年はどのような1年でしたか。
菅野会長 昨年も大雪や大雨、凍霜害などの自然災害により多くの農業被害が発生し、農産物の生育にも影響がありました。
また、コロナ禍で店舗が休業したり、消費が不安定になったりと、農家の皆さんは非常に心配されたのではないかと思います。JAの活動も制約され、人と人が会えず訪問しづらい状況が続きましたが、全農、JAグループでは農家の皆さんに安心して営農を継続していただけるよう懸命に取り組んできた1年でした。そんな中で消費者の皆さまに日本の農産物を買っていただき、非常に助かりました。
全農は、今まで農家とJAグループの総力で、日本農業を発展させるという考えでした。しかし、現在は一般企業との提携にも積極的に取り組んでいます。グループの枠組みを超えてオールジャパン、チームジャパンで営農振興、農産物の消費拡大、ひいては自給率を高めることに貢献していきたいと思います。
ところで、東京五輪。石川さんも卓球日本代表として出場し、女子団体では見事銀メダルを獲得されました。おめでとうございます。国民の皆さんも私たち農業関係者も非常に元気が出ました。コロナに振り回された1年でしたが、そんな中での明るいニュースとして、励みになりました。
石川さん ありがとうございます。私は東京五輪という舞台でプレーできて、卓球選手としての幸せを改めて感じました。コロナ禍で、卓球ができること自体がいつも以上にありがたいことだと感謝しています。
(昨年1月に開催された)全日本選手権でも5年ぶりに優勝できました。全農さんには本当にお世話になっているので、皇后杯を持って帰ることができて、すごくうれしかったです。
菅野会長 五輪では日本選手団の副主将や選手宣誓など、大役を担いました。プレッシャーもあったのではないですか。
石川さん すごく緊張しましたし、身が引き締まる思いでした。
菅野会長 昨年はJAタウンの公式アンバサダーにも就任されました。
石川さん 毎月、JAタウンから全国のおいしいものが届き、自分なりに料理して、いただいています。日本の食べ物のおいしさを改めて感じています。JAタウンで発売している「石川佳純(かすみん)カレー」は、お土産に持っていくと、いつも喜んでもらい、話も盛り上がります。商品開発時には私のいろいろなわがままを聞いてもらい、すごく好きな味になりました。
石川選手サポート10年 子どもから力もらう
菅野会長 全農が所属選手として石川選手を応援するようになり10年です。印象に残った活動や、思い出はありますか。
石川さん たくさんあります。ロンドン五輪に初出場してメダルを持って帰ってきたときには、JAグループの関係者の皆さんにたくさんの温かい応援をもらいました。その後もリオ、東京と同じくらいの応援をもらいました。いいときばかりではなく、なかなか結果が出ないときや五輪選考レースなどすごく苦しい時期もありました。でも、いつも温かく見守られ、支えてもらいました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
10年ほど前から数回実施している全農主催の卓球教室では、全国の子どもたちと一緒に卓球ができたことがすごくうれしくて楽しかったです。実は普段は子どもたちと卓球をする機会はあまりないです。子どもたちは最初、緊張していますが、1時間ぐらい経つと、私の試合を見てくれたことなど、たくさん話してくれます。子どもたちから私の方がパワーをもらうことが多いです。また、ぜひ参加したいです。
菅野会長 五輪に出てメダルを獲得した選手が目の前で語り掛けてくれたり、プレーを見せてくれたりすることは子どもたちの夢ですよね。そういう機会が広がるごとに将来、卓球をやりたいと思う子どもたちが増えると思います。そういった夢をこれからも応援します。
石川さん また、この10年で食への意識が大きく変わりました。けがや病気にならないためにバランス良く、体に良いものをたくさん食べて体をつくることを真剣に意識するようになりました。海外遠征時にも、食事をサポートしてもらい、本当に心強く、日本のおいしいものが食べられるのは、気持ちにも体にも、本当にありがたいです。
菅野会長 海外遠征中におむすび、みそ汁、梅干しを食べると、お母さんの味を思い出して安心しますよね。お米を食べるとパワーも出ます。試合の直前は日本食が多いですか。
石川さん はい。世界にはおいしいものがたくさんありますが、やはり日本食。ご飯やおむすびを食べると、試合前にすごくほっとする気持ちになります。
菅野会長 全農は世界に拠点があります。今、世界中で日本食が食べられますが、材料が日本産の日本食は限られています。今はコロナの影響で難しい状況ですが、引き続き米や農畜産物輸出に力を入れていきます。いずれ石川さんの海外遠征先でも日本産の食材で日本食が自分で作れる環境になります。ぜひ、期待してください。
石川さん はい。ありがとうございます。
全農50周年 これからも生産者と消費者を結ぶ
石川さん 全農さんは今年50周年を迎えるそうですね。
菅野会長 農業、農家を取り巻く環境は常に変化しています。全購連と全販連を一本化して全農という組織を作り上げ、時々の課題を一つ一つ克服し現在に至っています。全農はこれまでの50年も生産者と消費者を結ぶ懸け橋という役目で進んできました。これからもこのスタンスで、農業の省力化や、新技術の導入を支援し、地球環境に優しい農業で作り上げた安心・安全な農畜産物を提供します。消費者に味としてお返しし、おつなぎする道は永遠に続いていくと思います。
石川さん 新年度は新たな中期3か年計画がスタートする年になると聞きました。
菅野会長 新たな中期計画がスタートします。さまざまなことにチャレンジして食と農を取り巻く課題を克服していきます。例えば最近、安川電機と提携しました。農家はキュウリの収穫後に不要な葉を人力で取り、ものすごい手間がかかります。100%はできなくても、ロボットが7割取れば、農家は品質確保や増産に力を入れることができます。そういう技術を施設園芸農家に横展開したいです。また別の事例ですが、パスタやうどんの原料となる小麦は現在、ほとんどが輸入品です。そこで日清製粉と連携し、国産小麦のシェアを上げていきます。同社や国の研究機関である農研機構とも一緒になって、ニーズがある品種を開発して、それを農家が栽培することで、産地を育成します。
そういうチャレンジをより具体化するのが、次の中期計画のステップと考えています。消費者に安全でおいしいものを安定的に提供する体制が、より高まると思います。
スポーツ支援を継続
石川さん 会長やご家族はスポーツと何か縁はありますか。
菅野会長 私は、何をやってもうまくならないですが、子どものころからいろいろやっています。
孫は7人いますが、最初の孫は卓球をしています。バレーボールに取り組む孫や、野球を楽しんでいる孫もいます。それぞれ目の前の目標を持っているのが心強いです。
石川さん 今後スポーツをどうサポートしていくお考えですか。
菅野会長 全農はチビリンピックや小・中学校の卓球、野球、サッカー、カーリングなどさまざまなスポーツを支援しています。これを続けていくことが大事です。将来そこから日本、あるいは世界レベルの選手が出れば、大変うれしいです。
目の前の目標に全力 納得するステップを
菅野会長 ロンドン五輪は平野早矢香さん、福原愛さんがいて、石川さんがいました。リオは福原さん、石川さん、伊藤美誠選手(スターツ)。東京は石川さんを中心に、伊藤さんと平野美宇選手(日本生命)。今はその下の世代である小学生たちも育っていますね。石川さん自身は次のステップに向けて、どのように取り組もうと思いますか。
石川さん 日本の卓球レベルは今、すごく上がっていて、一選手としては競争が厳しくなるのはつらいです。でもその分、自分自身もレベルアップできた経験がありました。小学生ながらレベルの高い選手たちを見ると、うれしい気持ちがやっぱり大きいです。
今は、目の前の大きな試合、目の前の目標に、全力で一つ一つ取り組んでいきたいと思います。今年最初の大きな試合は、1月の全日本選手権になると思います。まずはここで良いスタートが切れるように頑張りたいです。
菅野会長 そう一つ一つですよね。農業もスポーツと同じです。目標は立てるけれど、行くのは、階段一歩一歩です。一つ一つの計画をこなし、自分で納得するステップを踏み次へ行く。役割も石川さんと同じで自分の置かれた立場で違ってきます。組合員、地域を取りまとめるJA、全国段階での全農とそれぞれ役割があります。
卓球界も若い世代が登場し、石川さんの立場も変わってくると思います。変化するということは、自分がそれだけ成長に向かっていけるということです。分野は違いますが、お互いに一生懸命、良い結果が出せるように頑張りましょう。今日はありがとうございました。
石川さん 本当にいつも日本の食から元気、パワーをいただいています。私もプレーで少しでもパワーを届けられるように頑張りたいです。JAタウン公式アンバサダーとしても、日本の食べ物のおいしさをたくさんの方に伝えたいと思います。こちらこそありがとうございました。