インタビュー JA全国女性協 洞口ひろみ会長
時代に合わせた 新しく 柔らかい考えを
JA全国女性組織協議会は今年創立70周年を迎えました。5月に会長に就任した洞口ひろみさん(JAみやぎ女性組織協議会会長)に、今年度の取り組みや会長就任の抱負などを聞きました。
――洞口会長の地元、宮城県名取市は、東日本大震災の影響はありましたか?
洞口ひろみさん 自宅も農地も仙台空港の近くにありましたので、農地は全て津波に襲われ、自宅は半壊となりました。その後、ボランティアや地元の方たちとひたすらがれきを撤去して、約1年後に営農を再開しました。昨日もジャガイモの収穫だったのですが、いまだに金具や食器のカケラなどが出てくることもあるので、手をけがしないよう気を付けています。
――会長は子ども食堂の活動もされているそうですが、始めたきっかけは何だったのでしょうか?
洞口さん 3年前に新聞やテレビで子ども食堂を知ったのがきっかけです。食べ物は余っているのに、行き届かない実態がある。子どもが地元の野菜を食べていない。それを知って、民生委員や女性部のメンバーと一緒に研修会に参加して始めました。現在は、ボランティアや民生委員の方などさまざまな立場の地元の皆さんと、月1回食堂を開いています。子どもだけではなく高齢の方も含め、地域で地域を見守る活動です。活動していると隠れた貧困も見えてきます。気になる方には顔色を見て、声をかけるようにしています。今後このような活動は、県内・全国の女性組織でも広がってくれると良いなと思っています。
――女性組織として力を入れている活動について教えてください。
洞口さん 今年は3カ年計画「JA女性 地域で輝け 50万パワー☆」の最終年度です。SDGsにつながる重点実施施策を着実に前進させたいと考えています。
――その中でも女性のJA運営参画についてよく発言されているとお聞きしています。
洞口さん JA運営への女性の参画は、半数と言わないまでも、より積極的に進めていきたいです。女性ならではの視点や感性があります。コロナ禍で食料が余っていますが、国内で生産したものを国内で消費し、海外に頼らない食と農の在り方について、女性ならではの提案ができればと考えます。また、食だけではなく、農薬の問題、安全な農業についても提案していきたいです。女性組織のメンバーにはそういったことを勉強している方がたくさんいます。
――そのために男性側も変わらなければならないですね。
洞口さん 男性にも令和の時代に合わせた新しく、柔らかい考えを持っていただきたいです。例えば、地域には頑張っている若い農業者がいますが、さまざまな悩みを抱えています。若い人は意欲があるし夢も持っている。夢や目標を持って農業に参画する若い人を積極的にサポートしてもらいたい。その中には女性がいるかもしれない。多様な世代のメンバーが参画することで、考え方が変わってくることを期待します。
――国産農畜産物、特にお米の消費拡大について力をいれたいとおっしゃっていますね。
洞口さん コロナ禍だからこそ求められる各都道府県の特徴ある加工商品、お漬物などを開発し消費拡大を図っていく方法もあります。最近はテークアウトが広がっているので、お弁当などで地元野菜を使ったメニューを広げていくことも有効でしょう。各地には郷土料理があり、伝統をずっと守ってきました。こうした伝統を子どもたちに引き継ぐ活動も有効だと思います。最近では地域学校協働活動(※)という活動があり、そういった場も活用していきたいです。
――発信力を高めていくためにSNS(インターネット交流サイト)の活用を強化するお考えはありますか?
洞口さん 最近は興味を持つメンバーが増えていますし、スマホ教室の開講などを通じて利用環境を整えていくことは可能だと思います。コロナ禍だからこそSNSでの発信は有効だと思いますので、できることから取り組みをすすめ、強化していきたいです。
――最後に、全農に対する期待をお聞かせください。
洞口さん 「簡単和風だし 旨!だしパック」という商品の開発に参加したことがあります。女性組織の意見も取り入れていただき、国産原材料にこだわった安全な商品をもっと作ってもらいたい。そして地域だけではなく、全国でその商品を展開できるような企画力と発信力をもっと強化してもらいたいです。また、環境に対する取り組みにも期待します。自然・みどり・野山を守り環境破壊を防ぐ取り組みも、SDGsが注目される中で全農に期待することです。
(※)地域学校協働活動 地域に住むさまざまな人々、各種団体、企業などの幅広い協力を得て、地域全体で子供たちの学びや成長を支え「学校を核とした地域づくり」を目指し、地域と学校がパートナーとして協働して行う活動。