特別栽培米「金沢美人」 日本酒造りで産地の活性化へ
石川県の金沢駅西地区に位置するJA金沢中央は、金融共済事業が中心の都市型JAです。石川県庁はじめ多くの建物が林立する管内は、かつては広大な田園地帯でした。
県下ブランド米の先駆け 特別栽培米「金沢美人」誕生
単収増が声高に叫ばれていた昭和後半。「量より質」時代の到来を見据えた18人により「有機農法研究会」が結成されました。白山の伏流水と、日本海から一年を通して吹いてくる、稲の露を払うおだやかな「露きりの風」に恵まれた土地で、彼らは当時まだ珍しかった減農薬・有機肥料使用の米づくりに挑戦。試行錯誤の上に収穫を迎えた米は「自然に近い環境で育った米を食べると、健康になり肌もきれいになる」との思いを込め「金沢美人」と命名されました。こうして誕生した「金沢美人」は当JAオリジナルのコシヒカリとして、1988年、県下ブランド米の先駆けとなり、98年には商標を、2018年には特別栽培米の認証を取得しました。
女子職員を交えたプロジェクト 6次産業化で産地活性化へ
しかし、その後は、消費の減少、米価低迷、高齢化などから手間のかかる特別な栽培は敬遠され、年間収量は97年度の39トンから2017年度には16トンに、作付面積も最大756アールから307アールにまで減少しました。
JA職員の頃、ブランド化に尽力した田村政博組合長はこの事態を憂慮し「金沢美人」を原料とした日本酒づくりを発案。くしくも酒類で同名の商標を有する金沢市の老舗酒蔵「福光屋」に協力を仰ぎ、双方の女子職員を交えたプロジェクトによる6次産業化商品「純米吟醸 あまくち 金沢美人」が19年秋に完成。市長や関係者を招いたお披露目会は大盛況でした。
さらに、生産者とJA関係者による酒蔵見学会が米づくりへの意欲を高め、20年度には作付面積が456アールまで増加しました。日本酒誕生を機に、安全安心で食味のよい「金沢美人」が見直され、産地の活性化につながることを期待しています。
概要 | 令和3年3月31日現在 |
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正組合員数 | 1910人 |
准組合員数 | 3069人 |
職員数 | 137人 |
販売品取扱高 | 2億7千万円 |
購買品取扱高 | 13億9千万円 |
貯金残高 | 1204億1千万円 |
長期共済保有高 | 2608億9千万円 |
主な農産物 | 米、スイカ、サツマイモ |