【AgVenture Lab発 スタートアップ インタビュー】「吊り下げ式ピーマン自動収穫ロボット」を生産者と一緒に開発 AGRIST(株) 取締役兼COO 高橋慶彦さん
自動収穫ロボットは高額で手が出せない? ―宮崎県を拠点とするAGRIST(アグリスト)株式会社は、低コストのピーマン自動収穫ロボットを開発しています。この開発に基づいたビジネスプランは、第2回JAアクセラレーターに採択されました。取締役兼最高執行責任者(COO)高橋慶彦さんにお話を聞きました。
創業のきっかけについて教えてください。
宮崎県新富町が設立した「こゆ財団(※)」で、3年ほど前から地域の生産者10人と、テクノロジーを使った「儲かる農業」を実行するプロジェクトを進めてきました。その結果、収量を増やす議論はできたのですが、収穫する人手が不足するという課題が浮上し、収穫ロボットが必要だという結論になりました。それが2019年1月のことです。そこから北九州高専発のベンチャー企業とともに試作機を開発したのが同8月、本格的な事業化のために会社を設立したのが同10月でした。
これほどまでの短期間で技術を確立できた秘けつは?
我々の強みは「現場力」です。開発ラボは生産者のハウスの隣にあります。弊社の収穫ロボットの特長である「吊り下げ式」というアイデアも、生産者からいただきました。ハウス内の地面は平たんではないし、きれいでもない。高いところにある果実を収穫するためには、ロボットの足回りは大きく複雑になる。最初から「吊り下げ式」であるべきだと。実際に生産者が使用し、よい点・悪い点を忌憚(きたん)なく指摘してもらい、その場で改良できる体制になっています。
シンプルかつ低コストであることにもこだわっていますね。
現状は初期導入150万円、利用料としてロボットが収穫した分の売り上げの10%をいただくモデルとなっています。まず目指す収穫能力は反収13tの生産者の場合、全体収量の20%、約3tの収穫です。多くのメーカーは初めから完全自動化による収穫能力100%を目指しますが、その結果高額になりすぎて誰も導入できなくなる。私たちの設計コンセプトは農業者の「サポート」であり、10%でも20%でも生産者の時間削減につながれば、栽培管理の時間が増えると考えています。栽培管理にこだわらず、削減できた時間を学びの時間につなげてもよいし、家族との休暇につなげてもよい。ロボットを手に取りやすい価格にすることで、現状の能力でも収益の向上と豊かな生活の実現につなげてもらえると考えています。
製品の市場投入の見通しは? 他の品目も視野に入っていますか?
今はまだ耐久性に課題があるのですが、秋までには改良して生産者が視察できる環境を整え、2023年初頭には供給を開始したいと考えています。品目拡大は視野に入っています。キュウリ、トマト、ナス、トウガラシといった果菜類は、ピーマンで培ったノウハウが活かせると思っています。
JAや生産者側も開発に参加する意識が大事ですね。
全国のJAや生産者と接していると、弊社へのものすごい期待を感じます。その背景には、生産者の皆さんの危機感の高まりがあるのだと思います。JAや生産者に開発者側に立っていただき、ともにトライアンドエラーを繰り返すことによって、収穫ロボットの完成度を高めていきたいです。
※こゆ財団 地元農家が生み出した「新富ライチ」を、一粒1000円の国産生ライチとしてブランド化し、東京圏に販路を広げることに成功した地域商社。宮崎県新富町役場が設立。特産品の販売と起業家の育成を行いながら、地域経済の創出に取り組んでいる。
アグリスト(株)
収穫の担い手不足を解決するロボット開発会社。農業が盛んな宮崎県新富町にエンジニアが集まり、農家と一緒にロボットを開発している。
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